小さなミスが大きなトラブルに——クレームやトラブルを「未然に防ぐ」接遇の視点

こんにちは。前回は、現場まかせによる「接遇のばらつき」とそのリスクについてお話しました。今回は、もう一歩踏み込んで「なぜ小さな対応の違いがクレームやトラブルを生み出すのか」を具体的に見ていきます。

1. クレームの“芽”はどこにでも潜んでいる

クレームには、顧客からの明確な申告だけでなく、「伝えられることなく消えてしまう」サイレントクレームも含まれています。いずれも、ほんの些細な対応の差が発端であることがほとんどです。

よくある“きっかけ”

  • 目を合わせない/無表情な対応
  • マニュアル通りで心がこもっていない印象を与える
  • お客様や相手の話を途中でさえぎってしまう
  • 小さなお願いに「できません」と即答してしまう
  • 感謝や謝罪の言葉が形だけになっている

これらは一つひとつを見ると小さなことに思えるかもしれませんが、積み重なることで「なんとなく居心地が悪い」「次は使いたくない」と思われてしまいます。

2. SNS・口コミで一気に拡大するリスク

一人のお客様の“嫌な体験”がSNSや口コミサイトを通して一気に広がることがあります。印象や気分は人によってさまざまですが、「感じが悪かった」「冷たかった」といった声は、とくにネガティブな方が目立ちやすいものです。

実際によくある例

「以前よりスタッフの対応が悪くなった気がする」

「事務的で、やりとりが冷たい」

こうした声が蓄積すると、それだけで店舗や企業の評価はマイナスに傾いてしまいます。

3. 問題が“表面化”するまでにかかるコスト

クレームやトラブルが発生した場合、その対応には時間や人手、精神的エネルギーが必要になります。原因を探り、社内で再発防止策を検討し、最悪の場合、謝罪や返金対応が発生することも。「最初から防げていれば…」という事態を減らすためにも、接遇研修でスタッフの意識や対応力を底上げすることはとても有効です。

4. 社内コミュニケーションの“ズレ”が連鎖する

接遇が不十分だと、スタッフ同士の連携やフォローもおざなりになります。例えば「忙しいときはちょっとぐらい無愛想でもしかたない」といった“ゆるみ”や、「自分のやり方が一番」という思い込みがぶつかり合うことで、チームワークや職場の雰囲気も悪化してしまいます。

  • スタッフ間での不信感
  • 教育色の強い先輩が後輩を指導しきれない
  • 新人が孤立しやすくなる
  • ミスやクレームの責任の押し付け合い

こうした状態が長く続くと、スタッフのモチベーションが下がり、離職率が上がる原因となります。

職場内接遇の大切さもここで見えてきますね。

5. 「当たり前」が“すれ違い”を生む時代

現場での「これくらいならいいだろう」が、お客様や取引先にはストレスになるというギャップも、クレームやトラブルの火種となります。

例えば、

  • 業界ならではの専門用語にお客様が戸惑う
  • マニュアルにないイレギュラーな対応が必要な場面で困る
  • 「うちは他もこうだから」と思っていても、他社ではしっかりしたフォローがある

というケース。過去にトラブルが少なかったからといって、今後も安心ではいられない時代なのです。

6. まとめ——「トラブルの芽」を摘む第一歩

多様化し続ける顧客ニーズや価値観の中で、“普通にしているつもり”がクレームに発展することは決して珍しくありません。
接遇研修は、現場に「あたりまえ」の基準を持ち、スタッフの心をひとつにし、小さなトラブルが大きな問題に発展するのを未然に防ぐ最善の方法です。

次回は、こうした土壌をどう変えていくか。「安心して働ける」「お客様も信頼してくれる」そんな組織をつくるための、接遇研修の具体的な価値をじっくり解説します。

札幌の職場内接遇・接遇・ビジネスマナー講師 益子明子

※一部にAI生成画像を使用しています。