時代に合った接遇の常識、アップデートできていますか?【第2回:社内編】

前回は、クライアントや取引先との関係性における「社外向け接遇」の重要性についてお話ししました。第一印象から信頼関係を築くための具体的なポイントは、明日からのビジネスに活かせるヒントになったのではないでしょうか?

さて、今回は「社内」に焦点を当ててみましょう。「社内だから気を使わなくても大丈夫」なんて思っていませんか?それは大きな間違いです。実は、社内における接遇意識の有無は、チームの生産性、社員のモチベーション、そして会社の成長にまで直結すると言っても過言ではありません。

「でも、社内のスタッフ間にまで接遇が必要なの?」と感じるかもしれませんね。そう、必要なのです。なぜなら、私たちは一日の大半を職場で過ごし、多くの時間を同僚や上司、部下と共有しているからです。社内での良好な人間関係は、円滑な業務遂行の土台となり、ひいては顧客へのサービス向上にも繋がります。

この記事では、見落とされがちな「職場内接遇(社内接遇)」の重要性と、職場の雰囲気を劇的に変える具体的なヒントを深掘りしていきます。


職場内接遇が会社にもたらす、意外な効果

職場内接遇(社内接遇)」と聞くと、少し堅苦しく感じるかもしれませんね。しかし、その効果は計り知れません。

まず、生産性の向上です。社内のスタッフ間で円滑なコミュニケーションが取れていれば、情報共有はスムーズになり、ミスの発生も減少します。例えば、あるプロジェクトで連携が必要な時、普段から互いに敬意を持って接していれば、質問もしやすく、協力体制も築きやすいですよね。逆に、ギスギスした雰囲気では、ちょっとした確認も億劫になり、結果として手戻りや遅延が発生しかねません。

次に、社員のエンゲージメント向上です。自分が尊重され、大切にされていると感じられる職場では、社員は安心して仕事に集中できます。上司が部下の意見に耳を傾け、同僚が困っている時にさりげなく助け舟を出す。そうした小さな接遇の積み重ねが、社員の「この会社で働き続けたい」という意欲を高め、離職率の低下にも繋がります。

そして、企業イメージの向上も見逃せません。社内の雰囲気が良い会社は、自然と活気があり、お客様に対しても良い印象を与えます。社員が笑顔で気持ちよく働いている姿は、まさしく企業の顔。採用活動においても、「雰囲気が良い会社」という評判は、優秀な人材を引き寄せる大きな魅力となるでしょう。

このように、職場内接遇は、目には見えにくいながらも、会社の根幹を支える重要な要素なのです。


意識していますか?「社内敬語」と「気遣いの言葉」

社内で話す時、「ついタメ口になってしまう」「砕けた言葉遣いが当たり前」という方もいるかもしれません。もちろん、職場の文化や関係性にもよりますが、TPOに応じた「社内敬語」や「気遣いの言葉」を意識することは、非常に大切です。

例えば、

  • 依頼する時: 「これ、やっといて」ではなく、「お忙しいところ恐縮ですが、こちらをお願いできますか?」
  • 感謝する時: 「サンキュー」ではなく、「〇〇さん、先ほどの件、本当に助かりました。ありがとうございます!」
  • 謝罪する時: 「ごめん」ではなく、「〇〇さんにご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした。」

どうでしょう?少し丁寧な言葉遣いにするだけで、相手に与える印象は大きく変わると思いませんか?特に、依頼する際には「恐縮ですが」「お手数ですが」といったクッション言葉を使うことで、相手への配慮が伝わり、快く引き受けてもらいやすくなります。

また、相手の状況を慮る「気遣いの言葉」も重要です。「疲れていませんか?」「何か困っていることはありませんか?」といった声かけは、相手への思いやりを示す行動です。普段からこうした言葉をかけられるスタッフ間の関係性は、心理的安全性が高く、困った時に助け合いやすいチームになります。

「堅苦しい」と感じるかもしれませんが、これらの言葉遣いや心遣いは、相手を「人」として尊重する姿勢の表れです。それが社内のコミュニケーションを円滑にし、お互いの信頼関係を深める土台となるのです。


円滑な情報共有のための「報・連・相」も接遇の一部

ビジネスの基本中の基本と言われる「報・連・相(報告・連絡・相談)」。これもまた、職場内接遇の重要な要素です。

「言わなくてもわかるだろう」

「後でまとめて報告すればいいか」

そんな風に思っていませんか?

しかし、必要な情報がタイムリーに共有されないことで、プロジェクトが滞ったり、誤解が生じたり、最悪の場合、大きなトラブルに発展することもあります。

報・連・相における接遇とは、相手が「いつ」「何を」「どのように」知りたいか、を予測して行動する気遣いのことです。

  • 報告: 業務の進捗状況や結果を、適切なタイミングで、簡潔かつ正確に伝える。ネガティブな情報ほど早めに報告し、対策を共に考える姿勢を示す。
  • 連絡: 共有すべき情報を、関係者全員に漏れなく、分かりやすい形で伝える。一方的な通達ではなく、相手が理解しやすいよう配慮する。
  • 相談: 困ったことや判断に迷うことがあれば、一人で抱え込まず、早めに周囲に意見を求める。相談する際も、自分の状況を整理して伝え、相手の時間を奪いすぎないよう配慮する。

特に、オンラインでのコミュニケーションが増えた今、意識的に「報・連・相」を徹底することが求められます。チャットツールで「了解しました」と一言返信するだけでも、相手は「伝わったな」と安心できます。些細なことかもしれませんが、こうした配慮が、社内の連携を強化し、業務効率を高めることに繋がるのです。


「ありがとう」と「ごめんなさい」が言える風土づくり

どんなに優秀な人でも、間違いは起こします。そして、人は誰かの助けなしでは生きていけません。だからこそ、社内では「ありがとう」と「ごめんなさい」が素直に言える環境が非常に重要です。

  • 「ありがとう」の連鎖: 誰かに助けてもらったら、すぐに「ありがとう」と感謝を伝える。その際、「〇〇してくれてありがとう、本当に助かったよ」と具体的に伝えることで、相手は「自分の行動が役に立った」と実感し、次も協力しようという気持ちになります。感謝の言葉が飛び交う職場は、自然と雰囲気が明るくなり、ポジティブなエネルギーが生まれます。
  • 「ごめんなさい」の勇気: 自分がミスをしてしまった時や、誰かに迷惑をかけてしまった時は、素直に「ごめんなさい」と謝る勇気を持ちましょう。言い訳せず、誠意を持って謝罪することで、相手からの信頼を失うことを防ぎ、関係性の修復に繋がります。「ごめんなさい」は、相手への尊敬と自己の責任を認める、大切な接遇表現の一つです。

これらの言葉が当たり前に交わされる職場は、互いを尊重し、支え合う素晴らしいチームになります。心理的安全性が高まり、新しい挑戦もしやすくなるでしょう。


終わりに:職場内接遇(社内接遇)は「自分ごと」から始まる

職場内接遇」と聞くと、会社全体で取り組むべきテーマだと感じるかもしれません。もちろん、組織としての取り組みは重要です。しかし、まずは「自分ごと」として捉え、今日からできる小さなことから実践してみてはいかがでしょうか。

すれ違う時に笑顔で挨拶をする。 困っている同僚に「何か手伝うことありますか?」と声をかける。 資料を渡す時に、両手を添えて丁寧にする。

ほんの少しの意識と行動が、あなたの周囲、そして会社全体の雰囲気を変えていきます。社内のスタッフ間における接遇意識が高まれば、それは必ずお客様へのサービスにも良い影響を与え、結果として会社の成長へと繋がるでしょう。

次回は、【第3回:自己成長編】として、接遇スキルが個人のキャリアアップや自己成長にどのように貢献するのか、その視点から深掘りしていきます。

札幌の職場内接遇・接遇・ビジネスマナー講師 益子明子

※一部にAI生成画像を使用しています。